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Laravel パッケージは一度リリースして終わりではありません。Laravel 本体、PHP、依存パッケージの更新に追従しながら年単位でメンテナンスするには、テストに加えて静的解析も継続的に回す必要があります。
このページは Laravelパッケージ開発Orchestra TestbenchでLaravelパッケージをテストするパッケージのバージョン互換性管理 の補助ガイドです。実装・テスト・バージョン戦略に静的解析を追加すると、長期保守しやすいパッケージになります。

静的解析とは

静的解析は、コードを実行せずに型の不整合や潜在的なバグを検出する手法です。Laravel パッケージでは、サービスコンテナ、Facade、Eloquent など動的な仕組みが多いため、動作確認だけでは見落としやすい問題を早い段階で拾えます。 静的解析を導入すると、特に次の効果があります。
  • 型安全性の向上 — 間違った引数や戻り値をレビュー前に検出できる
  • バグの早期発見 — 存在しないメソッド呼び出しや nullable の見落としをテスト前に把握できる
  • IDE 補完の改善 — PHPDoc と Generics を整えることで補完精度が上がる
  • 長期保守の安定化 — Laravel や PHP のアップグレード時に壊れた箇所を洗い出しやすい

PHPStan のセットアップ

まずは PHPStan 単体で解析基盤を用意します。PHPStan 2.x は mixed や nullable の扱いが以前より厳密なので、パッケージの公開 API を整えるきっかけにもなります。
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PHPStan を開発依存に追加する

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まずは対象ディレクトリを直接解析する

パッケージでは srctests を最初の対象にすることが多いです。
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Composer script に固定する

CI とローカルで同じコマンドを使えるように、composer.json に script を定義しておくと運用しやすくなります。

Larastan のセットアップ

Laravel パッケージでは PHPStan だけだと、コンテナ解決、Facade、Eloquent リレーションなど Laravel 固有の仕組みを十分に理解できません。そこで PHPStan の Laravel 拡張である Larastan を併用します。
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Larastan を追加する

現在のパッケージ名は larastan/larastan です。古い記事では nunomaduro/larastan が出てくることがあります。
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パッケージ開発なら Testbench も入れておく

Larastan は Laravel アプリケーションコンテナを起動して型を解決します。Laravel パッケージを単体解析する場合は、orchestra/testbench が必要になることがあります。
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extension.neon を読み込む

phpstan.neon で Larastan の設定を include します。

phpstan.neon の設定

phpstan.neon は解析レベル、対象パス、除外パス、例外ルールをまとめる中心設定です。Laravel パッケージなら最初から 100 点を目指すより、継続的に上げられる設定にしておく方が現実的です。 以下は phpstan.neon の例です。

レベル 0〜9 の選び方

PHPStan は段階的に導入できます。まずは現在のコードベースを回しきれるレベルから始めて、修正が進んだら上げていく運用が安全です。
PHPStan 2.x には level 10 もありますが、Laravel パッケージではまず 5〜7 を安定させてから 8〜9 に進めると現実的です。新規パッケージなら最初から高めのレベルで始める方が後戻りが少なくなります。

paths

paths には解析したいディレクトリを明示します。パッケージでは src だけでなく、型の崩れやすい tests も含めると効果的です。

excludePaths

生成ファイル、キャッシュ、検証用の Workbench など、静的解析の価値が低い場所だけを除外します。広く除外しすぎると、本来検出したいエラーまで見えなくなります。

ignoreErrors

ignoreErrors は最後の手段です。メッセージを正規表現で絞り、path も併用して影響範囲を限定してください。将来 Laravel や Larastan が改善されたときに戻しやすくなります。

よく使う型アノテーション

PHPStan と Larastan の精度は、PHPDoc の書き方で大きく変わります。Laravel パッケージでは特に @param@return@var、Generics (@template) を揃える価値が高いです。
この例では、次の情報を PHPStan に渡しています。
  • @param class-string<TModel> — 文字列が任意の文字列ではなく Model クラス名であることを示す
  • @return TModel|nullfind() が具体的なモデル型を返すことを伝える
  • @var Collection<int, TModel> — コレクションの key / value 型を明示する
  • @template TModel of Model — 再利用可能な generic repository を表現する

Laravel に特化した注意点

Laravel の「便利な magic」は、そのままだと静的解析に伝わりません。パッケージ側で型情報を足して、解析器が理解できる形に寄せる必要があります。

Facade

カスタム Facade は、利用者が呼ぶメソッドを PHPDoc で補足すると IDE と静的解析の両方に効きます。

マジックメソッド

__call() や Macroable に依存した API は便利ですが、型が崩れやすい場所です。公開 API にするなら、戻り値や引数が分かるラッパーメソッドを追加する方が安全です。
静的解析のためだけに ignoreErrors を増やし続けると、Facade や Macro の本当の壊れ方を隠してしまいます。まずは明示的なメソッド、型付き value object、PHPDoc 追加で解決できないかを優先してください。

Eloquent モデルの型指定

Eloquent リレーションや動的プロパティには、@property と relation の Generics を組み合わせると効果的です。

CI での自動実行

静的解析はローカルだけでなく CI でも必ず実行してください。特に複数 Laravel バージョンをサポートするパッケージでは、パッケージのバージョン互換性管理 の test matrix と同じ考え方で回すと、互換性と型安全性を同時に監視できます。 以下は .github/workflows/static-analysis.yml の例です。
この例ではテスト matrix と同じ Laravel / Testbench の対応表を使っています。テストと静的解析の両方で同じ組み合わせを監視すると、「実行は通るが型が壊れている」状態を見逃しにくくなります。

よくある誤検知と対処法

静的解析の警告は、まず「型情報が不足していないか」を疑ってください。誤検知に見えても、実際には PHPDoc が足りないだけのことがよくあります。

@phpstan-ignore-next-line

一時的な回避としては使えますが、理由を自分で説明できる行だけに限定してください。

ignoreErrors

同じエラーが複数箇所に出るときだけ検討します。必ず path を絞り、雑な正規表現で全体を握りつぶさないでください。

まず優先するべき対処

  1. PHPDoc を足す
  2. Facade や relation の戻り値型を明示する
  3. mixed を具体的な型に置き換える
  4. それでも説明できる誤検知だけ ignore する

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最終更新日 2026年5月30日