Laravel 10以前との比較
Laravel 11では「Slim Application Skeleton」として、アプリケーション構造が大幅に刷新されました。最大の変化は、設定の分散をなくしbootstrap/app.php 一か所に集約したことです。
この変更は新規プロジェクト向けです。既存の Laravel 10 アプリケーションをアップグレードしても、古い構造はそのまま動作します。
新しいディレクトリ・ファイル構成
スケルトンのディレクトリ構成
bootstrap/app.php — アプリ設定の中心
app/Http/Kernel.php・app/Console/Kernel.php・app/Exceptions/Handler.php の3ファイルに分散していた設定が、ここに集約されています。
bootstrap/providers.php — サービスプロバイダー一覧
config/app.php の providers 配列に記述していましたが、bootstrap/providers.php に分離されました。Laravel 11 のデフォルトでは AppServiceProvider のみです。
routes/ ディレクトリの変更
api.php と channels.php はデフォルトでは存在しません。必要に応じて Artisan コマンドで生成します。
routes/console.php ではスケジュールも定義できます。
廃止されたファイル
app/Http/Kernel.php の廃止
app/Http/Kernel.php の廃止
HTTP カーネルはフレームワーク内の
Illuminate\Foundation\Http\Kernel に統合されました。ミドルウェアのカスタマイズは bootstrap/app.php の withMiddleware() で行います。app/Console/Kernel.php の廃止
app/Console/Kernel.php の廃止
コンソールカーネルの2つの役割が分離されました。Artisanコマンドは
app/Console/Commands/ に置き自動検出され、スケジュールは routes/console.php に記述します。app/Exceptions/Handler.php の廃止
app/Exceptions/Handler.php の廃止
例外ハンドラーはフレームワーク内の
Illuminate\Foundation\Exceptions\Handler に統合されました。カスタマイズは bootstrap/app.php の withExceptions() で行います。Application::configure() の仕組み
フレームワーク内部での実装
Application::configure() は Illuminate\Foundation\Application の静的メソッドです。
basePathからアプリケーションのルートディレクトリを決定するApplicationインスタンスを生成するApplicationBuilderでラップし、デフォルトの設定を適用するApplicationBuilderインスタンスを返す
configure() 内で すでに withKernels() / withEvents() / withCommands() / withProviders() が呼ばれている 点です。bootstrap/app.php でこれらを改めて呼ぶ必要はありません。
メソッドチェーンで設定を行う流れ
create() の呼び出しで ApplicationBuilder から Application インスタンスが取り出され、bootstrap/app.php が return するのはこの Application インスタンスです。
リクエストからアプリ起動までの流れ
public/index.php がエントリーポイントとなり、bootstrap/app.php を読み込んで Application を取得します。その後、HTTP Kernel がリクエストをミドルウェアのパイプラインに通し、ルーターがコントローラーにディスパッチします。
ApplicationBuilder の主要メソッド深掘り
withRouting() — ルーティング登録の内部処理
AppRouteServiceProvider::loadRoutesUsing() にコールバックを登録し、アプリケーションの booting 時に AppRouteServiceProvider を登録します。
apiルートはapiミドルウェアグループと/apiプレフィックスが自動的に適用されるhealthに文字列を渡すとヘルスチェックエンドポイント(デフォルト/up)が自動登録されるhealthのパスはメンテナンスモード中でも除外される(PreventRequestsDuringMaintenance::except()で設定)webより先にapiが登録されることに注意。同じパスに対してWebとAPIのルートを定義すると、APIルートが優先されるpagesに文字列を渡すと Laravel Folio のルーティングが有効になる
withMiddleware() — ミドルウェアカスタマイズ
withMiddleware() は HttpKernel が解決された後にコールバックを実行します。これは afterResolving() フックを使っているためです。コールバックに渡される Middleware オブジェクトには豊富なカスタマイズメソッドがあります。
withExceptions() — 例外ハンドリングの設定
withExceptions() はフレームワークの Handler クラスをシングルトンとして登録した上で、コールバックを afterResolving() で設定します。コールバックには Exceptions ラッパーオブジェクトが渡されます。
withProviders() — サービスプロバイダー登録
withProviders() は Application::configure() 内でデフォルト呼び出されるため、bootstrap/providers.php は自動的に読み込まれます。追加のプロバイダーを渡したい場合は bootstrap/app.php で明示的に呼ぶ必要があります。
その他の主要メソッド
設計意図:なぜこうなっているか
「コードファースト」の設定
Laravel 10 以前のapp/Http/Kernel.php には配列でミドルウェアを列挙するスタイルが使われていました。これは設定ファイルに近い書き方で、PHPの型システムや IDE のサポートが得られにくいという欠点がありました。
Laravel 11 では withMiddleware(function (Middleware $middleware) { ... }) というコールバックスタイルに変わりました。これにより型補完が効き、条件分岐やループなどのロジックを使った動的な設定が自然に書けます。
「規約より設定」から「明示的な設定」へ
api.php をオプトインにしたのは、APIルートを使わないアプリケーションでも api ミドルウェアグループが常にロードされていたのを解消するためです。使わない機能はデフォルトで存在しない、という方針です。
afterResolving() フックの活用
withMiddleware() や withExceptions() で afterResolving() を使っているのは、設定の順序問題を避けるためです。ApplicationBuilder のメソッドはアプリケーションが完全に起動する前に呼ばれますが、実際の処理(カーネルへの設定適用)はカーネルが最初に解決されたときに遅延実行されます。
カスタマイズの実践例
APIとWebを共存させる
ミドルウェアのカスタマイズ
スケジュールを bootstrap/app.php に集約する
スケジュールは routes/console.php に書くこともできますが、withSchedule() を使うと bootstrap/app.php にまとめられます。
例外ハンドリングのカスタマイズ
コンテナバインディングを bootstrap/app.php で管理する
小規模なアプリケーションであれば、シンプルなバインディングを AppServiceProvider ではなく bootstrap/app.php に書くこともできます。
Laravelの起動処理の順番
Laravelアプリケーションの起動時、サービスプロバイダーとApplicationのフックは以下の順番で実行されます。- すべてのServiceProviderの
register()実行 - Applicationの
registered() - Applicationの
booting() - すべてのServiceProviderの
boot()実行 - Applicationの
booted()
AppServiceProviderに次のコードを追加すると実行順を確認できます。
ApplicationBuilderのregistered()、booting()、booted()はApplicationにコールバックを登録するだけのメソッドです。通常は使う必要がありませんが、起動準備が完了したKernelに対してbooted()で変更を加えるといった特殊な操作が可能です。
次のステップ
サービスコンテナ
ApplicationBuilder が内部で使っているサービスコンテナの仕組みを理解します。新アプリ構造 FAQ
新しいアプリケーション構造に関するよくある疑問と回答をまとめています。